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ワンタンと出っ歯のおじさん

ワンタンと出っ歯のおじさん

最近読んだ小説が図らずも三冊続けて1960年代のアメリカを舞台にしたものだった。

ロバート・マキャモン「少年時代」
スティーブン・キング「11/22/63」
ダン・シモンズ「サマー・オブ・ナイト」

そこに登場する人々はみな素朴で猜疑心がなく、子供たちは泥だらけになって森へ探検に出掛け、野球やボーイスカウトに興じている。日曜ともなればピックアップトラックに乗って家族全員で教会に通い、おばあちゃんは後進の尊敬する模範者であり、父親には一家を統べる威厳がまだ存在している。
現在のアメリカのことですら疎いのに1960年代のアメリカ社会における文化や歴史的背景など造詣が深いはずがない。そんな日本人の私ですら共感を覚えずにはいられない、片田舎の州の平和な生活が丁寧に描かれている。

殺人事件を目撃してしまった少年が過ごす1年間の体験と成長を追った「少年時代」、ケネディ大統領暗殺を阻止するために過去へと赴く主人公に待ち受ける驚愕と悲劇的な運命を綿密に綴った「11/22/63」、廃校になった校舎に潜むエジプトを起源とする悪魔神が操る死者と戦う少年たちのひと夏の冒険譚「サマー・オブ・ナイト」といった具合に内容は三者三様であるが、ストーリーの本流とは別に、場面ごとに描かれた時代風景が醸し出す作品全体の雰囲気が、自分が過ごした幼少期の思い出へと相通じるところがあるのだ。

一種独特なノスタルジーに浸る醍醐味とでもいおうか。
それは、上述した平和な時代に生きる人々の確固たる生活ぶりから感じ取れるもの。または、知らない名前ばかりだが、映画、テレビ番組、歌手、俳優、流行歌、道路標識や看板といった当時のサブカル的な用語が文章に穿たれた場面から伺うこともできる。
とうの昔に忘れ去ったあの日の青空や夕焼け、小石を蹴り続けた未舗装の地面と下校中によく見た名も知らぬ雑草、繁茂した木々の匂いと方々に飛び交う昆虫など、仕舞われた多くの記憶を一瞬のうちに眼前に引き戻してくれる一字一句から喚起される郷愁であった。

多くの時間を過ごした私の幼少期は、小説の舞台になった1960年代よりもう少しあとになるが、上記本の読後、心に長く留まった思いは、小学校の下校風景と何故か当時の替え歌だった。

学校の帰り道で定番の買い食いで思い出すことは、カルビー製菓の仮面ライダースナック投棄事件、近所にやって来たコカ・コーラヨーヨーのチャンピオン伝道師、ペプシコーラー王冠の裏側の灰色のビニール地をめくって当たる賞金50円、ちくわとツミレの美味しさを教えてくれたおでん屋さん、一度も当たりを見たことがない紐付きハズレ飴玉、イオンやイーアスつくばのふうりん堂というお店で今も復刻版が買える懐かしい駄菓子が本来あるべきガラスの襖を倒したような四角い升が並んだ陳列棚などなど。

それと、唐突に思い出した当時の替え歌。正確にいうと歌詞の文節区切りごとのしりとり歌である。歌は「瀬戸の花嫁」と「レインボーマン」。

瀬戸の花嫁
♪瀬戸ワンタン、日暮れ天丼、夕波小な~味噌汁、あなたの島エビフライ、お嫁に行く海苔巻き。若いトンカツ、誰もガンモドキ、心配するけれドーナッツ、愛があるかラッキョー、大丈夫なのりたま。
レインボーマン
♪インドの山奥でっ歯のおじさん 修行をして~

後者はあまり覚えていなかった。
これも学校の帰り道、側溝をふさぐU字溝を歩きながら歌った記憶がある。

遠く離れた無縁の地でありながら、久しく忘れていたことを思い出させてくれた本だった。
日本にも懐かしい時代の息吹に触れることができる小説はないものだろうか。

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